1972年、当時の西ドイツで発足したTECTA。ドイツの工業デザインに大きな影響をあたえた、かのバウハウスの流れを汲んでおり、その復刻や再現に注力していることでも知られる。ここでは、そんなTECTAが発表している作品群の中から、Asymmetric chair B1の魅力や特徴などをご紹介したい。
その名称が表している通り、左右非対称のデザインで、足も3脚というのが個性を極めている。手掛けたのは。こうした独特のフォルムを生み出すのに長けたデザイナーとして知られるステファン・ヴェヴェルカで、1979年の作品。
このAsymmetric chair B1について語るのであれば、真っ先に取り上げるべきは、その独特な形状。名称にもなっている左右非対称のデザインは、見る者すべてが目を見開くと言っても過言ではないだろう。とりわけ注目すべきは背もたれ部分で、右側部分のみにひじ掛け状の突起が設けられている。
背もたれ部分の左右非対称の形状はもとより、Asymmetric chair B1の存在感をより一層際立たせているのは後ろ2本、前1本の3本脚構造と、それに合わせた3角形の座面。加えて座面にはブラック&ホワイトのストライプ柄をあしらうことで、アクセント効果ももたらしている。手掛けたのは、こうしたユニークなフォルムの作品を多く手掛けるステファン・ヴェヴェルカというデザイナーで、制作されたのは1979年。
Asymmetric chair B1の製作年は1979年で、実に40年以上も前に生み出されたデザインであることに驚かされる。2022年代においても古さを全く感じさせないどころか、近未来的な雰囲気さえ感じさせるというのが秀逸。それでいて単に奇をてらっているということではなく、椅子としての実用性もしっかり考慮されているというのが、何より商品としての存在感を高めていると言えるだろう。
東西冷戦下にあった1972年、旧東ドイツから亡命してきたアクセル・ブロッホイザーが、西ドイツの田舎町であるローエンホルデにて立ち上げた会社がその始まり。大きな特色となっているのは、見た目の美しさと確かな機能美を融合させた、モダンデザインスタイル。その源流となっているのは、第二次世界大戦前のドイツにおいて、現代建築やインテリアデザイン、家具デザインに大きな影響をもたらした創業芸術の教育機関であるバウハウスだ。創業者のブロッホイザーが西ドイツに亡命したのも、バウハウスのスタイルを復刻する目的のためだった。
上記の通り、TECTAを立ち上げることになるアクセル・ブロッホイザーは、故郷の東ドイツにて、ドイツのモダンデザインの源流であるバウハウスの合理主義・機能主義を再現しようと試みたものの、当時の東ドイツ政府は、バウハウスを危険な個人主義として弾圧の対象とし、ブロッホイザーも父親と営んでいた家具工場を没収されるという事態になった。そうした経緯を経て西ドイツに亡命したブロッホイザーは、バウハウスの名作の復刻に尽力。それこそが、TECTAの揺るぎない信念なのである。
TECTAが手掛けてきた名作椅子の中から、Asymmetric chair B1の魅力をご紹介した。左右非対称という奇抜さを採り入れながら、それでいてTECTAの信念であるバウハウス由来の機能美の要素も融合させているのはまさに秀逸と言える。
さて、世界の高級家具に目を向けてみると、Asymmetric chair B1と同様に、名作家具として広く評価を集めている椅子やスツールは、他にもまだ存在する。以下のページにて、それら名作椅子を一覧でご紹介しているので、関心のある方は引き続きお読みいただきたい。