デザイナー・思想家として知られる太刀川英輔氏が率いるデザイン集団「NOSIGNER」。ここでは、「NOSIGNER」が販売している様々な作品の中から、傑作として名高いダイニングテーブル、イマジナリーをご紹介したい。
様々なジャンルで活躍するデザイン集団「NOSIGNER」が、徳島の伝統家具メーカー「本林家具」とコラボして生み出した作品、イマジナリー。2010年にグッドデザイン賞を受賞した名作だが、「NOSIGNER」代表の太刀川英輔氏は、デザインに与えられた名誉だけで伝統工芸の衰退を止めることはできないと語る。
長方形の天板に細い4本の脚。全体的に色調は単調で、実にフラットな印象のダイニングテーブルである。世界中の様々なテーブルから無駄を排除し、また無駄を排除し、やがて最終的に行き着く場所がこのデザインではないか、とさえ思わせる。
シンプルなデザインのテーブルには、いかなるチェアでもマッチするものだが、このイマジナリーに関しては、そうではない。チープなチェアを合わせることは、決して許されないだろう。そんな威厳すら感じさせる高級テーブルである。
箱物家具を製作する時によく採用される接合方法「三方留め」にフォーカス。すっきりとしたシンプルな「三方留め」のラインを残し、かつラインを増やすことなくテーブルの側面に「見えない引き出し」を収納している。伝統を背負う「本林家具」(徳島県)の職人たちとのコラボであったがゆえに実現した、実に精巧な細工である。
シンプル性やデザイン性の中に、テーブルとしての実用性も忘れていない。
イマジナリーを生み出したのは、ジャンルにとらわれない活動で知られるデザイン集団「NOSIGNER」。伝統工芸の衰退に危機感を覚えた代表の太刀川英輔氏が、徳島県の家具メーカー「本林家具」の職人たちの協力のもと、生み出した作品である。
2010年にグッドデザイン賞を受賞した名作テーブルとして知られるが、受賞を通じ、太刀川氏は「良いデザインを生み出すだけでは、現在の伝統工芸の危機を乗り越えることはできない」と痛感。デザイン性の評価を求めるのではなく、ブランディング等を通じたムーブメントへと太刀川氏が動き始めたきっかけとなった作品でもある。
ジャンルにとらわれないデザインというアプローチから、東日本大震災の被災地支援や地域振興支援など、様々な活動を精力的に行っている「NOSIGNER」。現実的な視点と前向きな行動力をベースに、デザインが持つ社会的意義を具体的に追求している集団である。
「NOSIGNER」は、現・代表を勤める太刀川英輔氏が設立したデザイン集団。当ページではイマジナリーというテーブルを紹介しているが、決して家具デザインを専門にしている集団ではない。「NOSIGNER」の活動内容は、未来社会の希望ある変化を究極の目標に、建築やプロダクト、グラフィックなど、分野を超えたデザイン活動、およびトータルディレクションである。
代表の太刀川氏は、デザイナーであるとともに、あるべき未来社会を考察する思想家でもある。その思想は2021年、『進化思考』(海士の風)として出版された。本作は解剖学者・養老孟子氏などから高く評価され、同年の山本七平賞受賞作品ともなった。
「NOSIGNER」が生み出している数々のデザイン製品の中から、ここでは、名作テーブルとして評価を集めているイマジナリーをご紹介した。コンセプトを同じくしたチェアやスツールも発表されているので、関心のある方は各々リサーチして欲しい。