1938年にアメリカで生まれたKnoll(ノル)。
これまで生み出してきた数々の世界的名作の中から、ここでは、Wassily Chair(ワシリーチェア)をご紹介しよう。チェアの特徴や魅力、ブランドの歴史などを知れば、Wassily Chair(ワシリーチェア)が不朽の名作とされてきた理由が分かる。
スチール製のチェアの歴史は、このWassily Chair(ワシリーチェア)から始まったと言っても過言ではない。
なぜならば、このチェアのリリースをきっかけに、コルビジェやミースら巨匠たちがスチール製のチェアに興味を持ち始めたからである。
画像を通じ、改めてよくWassily Chair(ワシリーチェア)の設計を眺めていただきた。
その座面と背もたれ。まるでハンモックで宙に浮いているような、実に快適かつ不思議な座り心地を持つ椅子である。
自宅または知人宅で、ゆっくりとした時間を過ごしたいときに、最適な環境を提供することだろう。
スチールパイプで作られた椅子、Wassily Chair(ワシリーチェア)。
発表された当初は賛否両論があったものの、以後、ル・コルビュジエやミース・ファン・デル・ローエなどの巨匠たちが、スチールパイプを積極的に採用。
家具デザインの歴史において、いかにWassily Chair(ワシリーチェア)が大きな影響を残したかを理解できよう。
Wassily Chair(ワシリーチェア)は、1925年、アメリカの建築家でありプロダクトデザイナーでもあるMarcel Breuer(マルセル・ブロイヤー)がデザインした作品だ。
同国の高級家具ブランド、Knoll(ノル)が製造販売を手がけている。 椅子は木材から作られる、という常識が固定していた1925年当時、マルセルは、世界で初めてスチールパイプを使った椅子をデザインし製作した。
それが、このWassily Chair(ワシリーチェア)である。工業用素材だった金属を家具の素材に転用したことで、Wassily Chair(ワシリーチェア)以後、家具市場でも大量生産がスタートした。家具市場の歴史を変えた一脚である。
アメリカを代表する高級家具ブランドの一つとして著名なKnoll(ノル)。
1938年、当時24歳だったドイツ生まれの青年、ハンス G・ノールがアメリカ・ニューヨークで創業したブランドである。ミースやサーリネンなどのビッグネームとのコラボ作品で知る人も多いであろう。
1938年にアメリカ・ニューヨークで設立されたKnoll(ノル)。ドイツ生まれのハンス G・ノールが24歳のころに設立した、アメリカを代表する高級家具ブランドの一つである。
ブランド設立後、ハンスはミースやサーリネン、ベルトイア等の著名建築家・デザイナーたちとタッグを組み、数々のコラボ作品を発表。その画期的かつ洗練された作品群は、世界中の家具デザインに多大なる影響を与えたとされている。
2022年現在、Knoll(ノル)が展開している部門は大きく3ジャンル。1つ目が、快適かつ革新的なオフィス環境を演出する「Knoll Office」、カーテンや椅子張り地などを製造する「Knoll Textiles」、往年の名作の数々を含む「Knoll Studio」だ。
いずれの部門から生まれる作品も、住宅やオフィス、パブリック等で、それぞれのシーンに応じて強い存在感を放っている。
「No Compromise, ever」(決して妥協しない)を信条とするKnoll(ノル)。使い心地の良さと美しさとを兼ね備えたその作品群は、時に「使われる芸術品」と評される。
世界で初めてのスチール製チェアとされるWassily Chair(ワシリーチェア)。
その歴史的意義はもとより、快適な座り心地やスタイリッシュなデザイン性こそが、現代もなお市場で求められる所以となっているのであろう。
名作と呼ばれる家具には、言葉では語ることができない深遠な魅力がある。
名作同士を比較することで、その魅力を感じるセンスも、より研ぎ澄まされていくことだろう。次のページでは、名作椅子を一覧で比較・紹介している。