B32

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ドイツの家具メーカーとして知られるTHONETが工房として設立されたのは、実に1849年。ただし、創業者であるミヒャエル・トーネットは1819年頃から家具造りに携わっていたことが知られており、実に200年という歴史を誇っている(2022年12月現在)。ここでは、そんなTHONETが手掛けた作品群の中から、B32の魅力や特徴などをご紹介したい。

B32

円筒形のスチールバイプに曲げ加工を施し、シンプル形状のフレームとして成形。その上で、座面と背もたれを一体化して成形し組み合わせることで、THONETを代表する椅子製品のひとつとなったのが、このB32。デザインを手掛けたのは、かのバウハウスの第一期生であり、後に教官も務めたハンガリー出身のマルセル・ブロイヤーで、1928年のこと。

B32の特徴

金属の曲げ加工によって椅子を造る、という新機軸

THONETは家具造りにおいて「木は真っすぐであるもの」という風潮が強かった19世紀の半ばに、板をニカワで貼り合わせて曲げる曲木の技術を独自に開発。その技法で制作された椅子「No.4」は大きな評判を呼び、今なお、トーネットを代表する製品のひとつとされている。そうしたトーネットの先進性が再び発揮されたのが、他ならぬB32だ。チューブ状のパイプ素材に曲げ加工を施して椅子を制作するというアイデアをカタチとして実現するという、エポックメイキングな作品だった。

バウハウスのアイデアを、マルセル・ブロイヤーが実現

椅子のデザインや歴史に詳しいものならば、チューブ状のスチールパイプ素材に曲げ加工を施し2本の脚で椅子全体を支えるカンティレバー構造はお馴染みだろう。このアイデアはB32の生みの親であるマルセル・ブロイヤーも学んだバウハウスが由来とされていることが知られている。発想自体は1922年頃に存在していたとされているが、実際の椅子に取り入れたのは、マルセル・ブロイヤーだ。言ってみれば、B32はスチールパイプ素材とカンティレバー構造という2つの要素を、同時に切り拓いた記念碑的製品と言える。

B32の歴史

上記の通り、チューブ状のスチールパイプ素材に曲げ加工を施すカンティレバー構造の椅子というアイデア自体は1922年頃にバウハウス内で提唱されていたものの、当時はまだ金属加工の技術が低く、試行錯誤を繰り返しながら試作を繰り返したとのことだ。そして1928年、苦労の末にマルセル・ブロイヤーが完成させたのがB32。その後のB64やS35など、THONETが生み出すカンティレバーチェアの原点となった。

THONETについて

ドイツの著名家具メーカーであるTHONETは、創業者であるミヒャエル・トーネットが1819年頃から既に家具造りに携わっており、工房が設立されたのも1849年。まさに老舗中の老舗といえる存在である。その上で、単に歴史が古いということに胡坐をかくことなく、前述したような曲木の技術を用いたNO.14や、金属加工技術を用いたB32など、新たな時代を切り拓く作品を生み出しているというのが、何よりの魅力と言えるだろう。

THONETのブランドストーリー

本ページの主人公であるB32、そしてTHONETを代表するもうひとつの製品であるNO.14はともに、日本の無印良品によってリプロダクトされているという点も見逃せない。トーネット社の熟練した職人技と工場を有効に活用しながら、無印良品ならではの流通網や販売体制を活かし、リーズナブルな価格で販売されている。THONETの品質やこだわりの高さを体験しやすくなっているのはありがたいことである。

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THONETが手掛けてきた名作椅子の中から、B32の魅力をご紹介した。金属パイプを加工したのカンティレバー構造の椅子は、まさにここから始まったというのには驚かされた方も多いことだろう。

さて、世界の高級家具に目を向けてみると、B32と同様に、名作家具として広く評価を集めている椅子やスツールは、他にもまだ存在する。以下のページにて、それら名作椅子を一覧でご紹介しているので、関心のある方は引き続きお読みいただきたい。