2008年、高松にジョージナカシマ記念館が開館したことをきっかけに、日本でも広くその名が知られるようになった日系アメリカ人デザイナー、ジョージ・ナカシマ。
彼がデザインした多くの名作家具の中から、ここでは初期の名作として知られるグラスシートチェアをご紹介しよう。
「木の美しさをそのまま椅子にした天才」と評されたジョージ・ナカシマ。
ウォールナットとい草からなるグラスシートチェアは、その天才から生み出された作品群の中でも、特に「傑作」と名高い名作家具の一つである。
座ったその瞬間、スッと自然に体へなじんでいく不思議な感覚。
木とい草という自然素材が持つ温かみとやさしさ。
デザインのクオリティもさることながら、多くの人は、この椅子の座り心地の良さ、快適さを高く評価する。
本来椅子は座るためにあるもの、という原点を思い出させる名作である。
この椅子の実物を鑑賞する機会があれば、実際に手に持って持ち上げてみていただきたい。
その意外な軽さに驚くだろう。
重量は実に約4kg。女性でも高齢者でも、苦もなく椅子を手に持って移動させられる。
芸術性だけではなく、実用性も考え抜かれた椅子である。
日本人を両親に持つ日系アメリカ人デザイナー、ジョージ・ナカシマ。
第二次世界大戦中に抑留されていた日系人強制収容所で、腕の良い大工と知り合ったことをきっかけに、ナカシマは家具製作の道を究めることとなった。
ジョージ・ナカシマは、1905年生まれの日系アメリカ人デザイナーである。
シアトルで育ったナカシマは、大学で林学を学んだのちに、マサチューセッツ工科大学大学院にて建築学を習得。
卒業後は、ロンドンやパリを経て日本にわたり、アントニン・レーモンドの建築事務所に勤務した。
その後、改めてアメリカに戻るも、世の中は第二次世界大戦の真っ只中。
ナカシマは日系人の強制収容所に抑留される形となった。
収容所での厳しい生活の中、ナカシマは日系二世の大工と出会う。この大工から基本的な木の知識、および木工技術を学んだことがきっかけで、のちに家具作りを究める道が切り開かれた。
戦後、強制収容所から解放されたナカシマは、アメリカにあるニューホープ工房に身を置いて家具作りをスタート。1950年、その作品がアメリカ国内でも認められるようになり、以後、木工家具の有識者として彼の名は世界的に著名となった。
なお、ナカシマが生み出した作品は、当時も今も、ニューホープ工房(ペンシルベニア)と桜工房(高松)でしか作られていない。
いずれも小さな工房であるが、世界のナカシマの目が認めたのは、世界中でたったこの2ヶ所のみである。
デザイン性と機能性の両立を極限まで追求したグラスシートチェア。日本はもとより世界中から注目を集める歴史的な傑作とされている。作家に興味のある方は、一度、高松にある「ジョージ・ナカシマ記念館」を訪れてみると良いだろう。
世界の識者から高い評価を獲得しているグラスシートチェアだが、同様に歴史的傑作と評される名作椅子は、まだいくつか存在する。
それら名作同士を比較すればこそ、よりグラスシートチェアの奥深さを知ることになるだろう。
以下のページでは、名作椅子を一覧形式でまとめている。名作椅子に関心のある方には、ぜひご覧いただきたい。