フィン・ユールの家具デザイナー人生の中でも初期に制作されたのが「イージーチェア(No.45)」。
曲線美にこだわった作品で「世界で最も美しいアームを持つチェア」として評価されている。
横から見たアーム部分が描く曲線には、洗練された美を感じられるだろう。
イージーチェアに使用されているのは良質な無垢材であり、その滑らかな手触りは触れる者をうっとりとさせる。
まるでペリカンが翼を広げたような造形をしていることからその名が付けられた「ペリカンチェア」。
「椅子の後ろ姿が美しい」と評価されるこのチェアは、背面や側面を見て分かる通りに曲線だけで造られている。
フィン・ユールの作品の中でも、最も曲線美にこだわって制作された逸品ではないだろうか。
ペリカンの翼が優しく包み込んでくれるようなデザインは、座る人に安心感を与えてくれる。
左右に伸びた背もたれと包み込むような形の側面に独創的なデザイン性を感じられる「ベーカーソファ」。
その彫刻作品のような姿から、制作当初はフィン・ユールの作品の中でも評価が低かったと言われている。
家具としての域を脱した斬新なデザインだが、ナチュラルでモダンな魅力が現在では多くの人々に愛されている。
「ベーカーソファ」を中心として部屋をコーディネートした時に、その魅力が際立つ作品ではないだろうか。
丸みを帯びた柔らかいフォルムが印象的な「ポエトソファ」。
ソファ本体と座面のカラーを変えたことで、芸術性の高い作品となっているだけでなく、その座り心地も良好。
ソファ全体が曲線を描いているため、座ると体を優しく包み込んでくれる。
まさにデザイン性と実用性を兼ね備えた、フィン・ユールらしい作品。
1912年にデンマークのコペンハーゲンに生まれたフィン・ユール。1930年からデンマークの王立芸術アカデミー建築学科にて建築家のカイ・フィスカーの下で学んだ後に独立した。
建築家として多くの仕事に携わっていたフィン・ユールだが、工業専門学校でインテリアデザインを教える講師の顔も持っていた。
あらゆる彫刻家や建築家からの影響を受けたフィン・ユールの作品は「空間と家具の彫刻家」として知られている。当時のデンマーク家具界は、近代家具デザインの父と呼ばれるコーア・クリントにより牽引されていたが、独自のスタイルを貫くフィン・ユールの作品は瞬く間に世界に広がる。
1973年に、家具職人組合の展示会に出展したことで「フィン・ユール」の名が広く知られるようになり、その後デンマークの家具デザイン界における先駆者となった。
フィン・ユールの作品には彼の代表作である「イージーチェア」のアームのように曲線の美しさにこだわったものが多く存在する。
無駄のない計算しつくされた曲線の完成美から、「家具の彫刻家」と呼ばれるほどだ。
このような芸術性だけでなく、座り心地などの実用性も兼ね備えているのがフィン・ユールによる家具の特徴。
椅子やソファに座ったときに、心安らぎゆっくりと寛げるのもまた、フィン・ユールの作品の魅力だろう。