スウェーデンの高級家具ブランドとして知られるPP mobler (ピーピーモブラー)。
デザイナーにハンス・J・ウェグナーを抱え、その椅子の愛用者にJ.F.ケネディを抱える至高のブランドである。
ここでは、PP mobler (ピーピーモブラー)の名作家具の中から、J.F.ケネディが愛したというTHE CHAIR(ザ チェア)をご紹介したい。
椅子それ自体からは過度な主張を抜き、人が座ったとき、その人を大きな主役へと引き立てる不思議な魅力を持ったTHE CHAIR(ザ チェア)。
「座っている時に自分を堂々と見せてくれる椅子」を探し求め、最終的にこの椅子へと行きついたJ.F.ケネディの目に敵った椅子。
それが、この「THE CHAIR(ザ チェア)」である。
THE CHAIR(ザ チェア)に座る機会があれば、しっかりと確認していただきたいポイントがある。
それが、アーム木材の触り心地である。上質な木材、腕に沿うような柔らかなライン、いつまでも素手で撫でていたくなるような滑らかな仕上げ。
そのアームの心地は、デザイナーから座る者へ捧げられたやさしさである。
椅子には色々な目的がある。
たとえば、ダイニングで食べることを目的としたり、デスクで仕事することを目的としたりする。
では、このTHE CHAIR(ザ チェア)は、何が目的であろうか。
他でもない、「座ること」そのものが目的である。
一般に椅子は、主要な目的の脇役となる存在だ。
しかしTHE CHAIR(ザ チェア)は奥行きが深いため、脇役に回せばテーブルやデスクと競合して使い勝手が悪い。
「ゆったりと腰を掛けるためにこの椅子をデザインした」とデザイナーは語っている。
THE CHAIR(ザ チェア)は、1949年、デンマークを代表する家具デザイナーの一人、ハンス・J・ウェグナーがデザインした作品。
日本でも著名なデザイナーなので、その名をご存じの方も多いことだろう。
生涯で数百種類の家具をデザインしたと言われているウェグナーだが、このTHE CHAIR(ザ チェア)こそ、ウェグナーが残した最高傑作と評する識者も多い。
「座っている時に自分を堂々と見せてくれる椅子」を探し求めたJ.F.ケネディが、1960年のアメリカ大統領選テレビのテレビ討論会で使用した椅子としても有名である。
もともとスウェーデンの小さな家具工房だったPP mobler (ピーピーモブラー)。
北欧家具におけるデザイン界の巨匠、ハンス・J・ウェグナーとの奇跡の出逢いをきっかけに、その小さな工房は世界を見据えるビッグブランドへと成長した。
北欧家具を語る上で、今やPP mobler (ピーピーモブラー)を外すことはできない。
PP mobler (ピーピーモブラー)は、1953年にスウェーデンで誕生した家具ブランド。
家具職人だったペターセン兄弟によって設立され、二人の名前の頭文字をとって「PP」と名づけられた。
もともとは小さな家具工房でスタートしたPP mobler (ピーピーモブラー)だったが、北欧家具におけるデザインの巨匠、ハンス・J・ウェグナーとのコラボレーションをきっかけに、またたく間にそのブランド名が有名に。
PP mobler (ピーピーモブラー)の職人たちの妥協なき生産技術を知り、ウェグナーが直接工房を訪れ、自身のデザインの家具製造を依頼したという。
妥協なきモノづくりへの精神と妥協なきデザインへの精神が、奇跡の出逢いを迎えた瞬間だった。
以後、様々なデザイナーとのコラボによる数々の名作家具を製造してきたPP mobler (ピーピーモブラー)だが、家具の製造工程の一部すらも他工房に任せることなく、全行程を自社工房の職人が手がけているそう。
工房からは、当ページでご紹介した「THE CHAIR(ザ チェア)」や「PP550」など、歴史的な傑作が数多く生まれている。
恐らくTHE CHAIR(ザ チェア)は、人が座る、ということを哲学的な水準まで考え抜いてデザインされた椅子であろう。
座る者に安らぎを与えながら、かつ、座る者をここまで美しく見せる椅子は、他に数少ない。
世界中の家具の歴史をひも解くと、このTHE CHAIR(ザ チェア)と同様に、名作と呼びうる椅子が、まだいくつか存在している。
それら名作椅子を比較することで、椅子の魅力をより深く感じていただきたい。
そんな気持ちで、以下のページに名作椅子の一覧を作った次第である。ぜひご覧いただきたい。